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電車にゃ遅れる、本は失くす

2012年08月27日
8月25日(土)、金沢市の石川県立歴史博物館で開かれたシンポジウム「チベット美術の過去・現在・未来」に参加し、「チベットの仏教説話図」と題して発表を行った。

前日、ぎりぎりまで準備をして御山を下りたのが、午後6時過ぎだった。なにしろ19日に帰国してから、ほかの用に追われておちついて準備をする時間がほとんどなかったのである。ネットの「路線」をみると、米原まで「こだま」で行って北陸行の特急をつかまえろ、とある。綱渡りのようなものだが、次の日は、10時からのオープニングに続いて午前中の発表の司会を頼まれているので、今夜中に金沢入りしていた方が安全なのである。

家に帰って腹ごしらえをし、8時55分の電車で泉ヶ丘を出発した。ネットの指示通り、三国ヶ丘で降りて、大阪行きの快速を待つ。先に各駅停車の天王寺行きがくるが、これに乗ってはいけない。

ここまではよかったのである。

失敗は、乗ってはいけない鈍行に、つい乗った、というか、気が付くと乗っていた、ことにある。思えば、8月6日に関空で長年愛用していた帽子を失くしたのがケチの付き始めだった。幸いにしてチベットでは、さしたる失敗はしないですんだが、「ついてない」モードは続いていたらしい。

車中で気付いて、隣りに座っていたおばさんに相談したが、もはやいかんともしがたかった。スマホさまの指令は、大阪から高速バスで行け、だが、チケットもないのに乗れるわけがない。

結局、大阪駅近くのホテルで1泊となった。予約していた金沢のホテルに連絡したら、キャンセル料は勘弁してくれた。

翌日6時に起きて身支度を整え、ホテルを出た。近くのコンビニでレジュメをコピーし、7時9分発のサンダーバード1号に無事乗車。金沢着は9時45分だから、10時にはぎりぎり間に合わないにしても、発表が始まる10時15分には会場に着いているだろう。その辺りのことは、昨夜第一発表者のK谷君に連絡してある。ここまでくれば、もう安心である。

福井を過ぎて小松に近づいている頃だった。車内放送「この先、線路内に人が立ち入っているとの連絡がありますので、しばらく速度を落としてまいります」

もう矢でも鉄砲でももってこいの心境。結局、サンダーバードは5分遅れて金沢駅に到着、駅からタクシーに乗り、少し伸びたオープニングアドレスが終わる10時20分には、私は席についていた。

すべての発表が終了したのは5時過ぎだったと思う。

やれやれと思って手さげを持ったら、これがやたらに軽いのである。おかしいなと思って、中をあらためると、あるはずの本が一冊見当たらない。これは『釈尊絵伝』の解説本で、私にとってはとても大切なものだ。といっても、ないものは仕方がないので、家に置いてきたのだと自分に言い聞かせ、6時からのパーティー会場に向かった。このパーティー、市街が見下ろせる料亭の座敷で、なかなかおつなものであった。例によって隣にK本君がいたので、ちょっと騒ぎすぎたきらいはあるが。

本来ならば、ついでにいろいろ見学したいところだが、忙しいので、8時過ぎの特急で大阪に戻る。長ーい一日のしめくくりに泉ヶ丘から自宅への道をとぼとぼ歩いている途中で、はたと気が付いた。あの本は確かに持っていた。今朝方コンビニでコピーするまでは。家に着いてから、そのお店、ファミリーマートに電話した。
「今朝、コピー機のところに本を忘れたかもしれないんですけど」
「どんな本ですか」
「布張りの灰色の結構大きな本で、名前は『釈尊絵伝』と…」
「仏教の本ですね。ありますよ」

翌日回収にいった。ファミリーマートの人々には心よりお礼を言いたい。そして、とにかく、少し休みたい。





ある大学教員の日常茶飯