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坊さんも戦場は怖い

2008年09月25日
  先日、南方熊楠顕彰館では、T村さんたちが、いろいろな知識をやさしく授けてくれた。
 その中の一つに、次のようなものがある。

 熊楠は、辻清吉という人物に宛てた大正15年の手紙の中に、次のようなことを書いている(『熊楠研究』第7号, p.187)。

 日露戦争の時、今は故人となったある有名な禅僧が軍を慰問した。ところが彼は大砲の音や砲弾の落下におびえて逃げ回り、ついに戦場に行かなかった。これは志賀重昂が実見した話である。ところが、その僧が書いた戦場体験記を読むと、弾丸砲弾が乱下する中を平気で歩き回り、まるで地獄の地蔵菩薩のように、負傷兵を慰問したようなことを書いている。その文章は面白いが、志賀の話を読んで、私は、その僧の臆病は生まれつきだから仕方がないと思った。


 これを読んで、私は、ある人物の名前が浮かび、それをT村さんにも話したが、昨日になって志賀の書いたものを見てみると、志賀とその僧はともに遼東半島の戦場を訪れてはいるものの、その期間はずれていて、二人が戦場で直接顔を合わせる機会はなかったことが分かった。
 してみると、別人か? それとも志賀の談も、実は伝聞なのか?伝聞であるならば、熊楠の言っていることはそのまた書きなおしということになる。
 

 悟りすました高僧が砲声におびえて逃げ回った、という話は俗耳に入りやすいし、私なぞ、人間らしくてかえって好ましいとすら思えるが、こういう話の取扱いはくれぐれも注意が必要だ。

 それにしても、この坊さんが誰か、ご存じの方いませんか?

 
研究ノート