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高野山大学学長、ダライ・ラマ法王と密教を語る(1)法王に自分が見た夢について相談する

2011年11月14日
「密教を語る」の大学側の出席者は、藤田光寛学長、乾仁志教授、川崎一洋密教文化研究所受託研究員、それに私、である。

予め大雑把に決めていたことは、藤田学長が高野山滞在の印象などをお聞きした後、本題に入る。藤田学長の話題は、8世紀後半、チベット最初の僧院サムイェー寺で行われた授戒に関するものだ。藤田学長はインド・チベット仏教の戒の専門家である。これは前々から一度聞いてみたいと思っていたことらしい。

乾さんは日本密教の世界観・生命観などを話題にする。川崎さんは当初巡礼について話す予定が、法身の問題に切り替えた。いずれも真言宗の教義の根幹にかかわる問題である。こういう話題は聴衆には必ずしも分かりよくはないだろう。だがこうした問題に触れることも、日本密教とチベット密教の学術交流には必要なことであり、またふさわしいことだという思いがあった。

案の定、議論は途中からとても晦渋なものになった。通訳の言葉の問題もいくらかあったらしく、議論がうまくかみ合わない。ただ収穫はあった。こういうテーマでチベットと日本の学者が意見交換することも可能なことが分かったことである。これは将来につながることだと思う。

チベットの学僧は一般に伝統的な教学について博大な知識を持っている。これに対して日本の学者は日本密教の伝統の上に科学的な方法論を身に着けている。両密教の交流が本格的に進めば双方にとって得るものは大きいはずだ。

さて1時間半以上経ってから、私の番になった。以下に記すやりとりは、かなり圧縮したものである(正確には録音を聞いて直すことにしたいと思っている)。

「私の質問は二つです。一つは質問というよりは個人的相談のようなものです。もう一つはより一般的な説明です。まず法王様にお伺いいたします。昨日まで二日にわたって金剛界灌頂を授けてくださいましたが、その中に二日目の夜明けに見た夢で成就の吉凶を占うということがありました。その際、自分がどんな夢を見たかをこのような大勢の人の前でしゃべってもよいものでしょうか」
法王「かまわないよ」
私「私が見た夢は、マンダラの一部のような図形です。色はライトブルー。そして頭の中で『滅』(めつ)という声が聞こえました。苦集滅道の滅です」
法王「それはとてもよい夢だ。将来、涅槃に入ることができるよい兆しのように思われる」
私「ありがとうございます。心に刻んで努力します」
法王「しかしよい夢を見たということで、それに執着心を起こすようであれば、かえって修行の妨げになるので注意しなければならない」
私「はい、肝に銘じます」

それまで毎日砂マンダラが大きくなってゆくさまを観察していたから、このような夢を見たのかもしれない。公の席で法王様に個人的相談とは相当に厚かましかったが、会場の空気を換える効果もいくらかあったかと思われる。
高野山大学の力