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チベットの石のライオン

2010年06月17日
チベット・蔵王墓 2005年8月
*2005年8月 中央チベット・山南地区チョンギェー

ここはヤルルン渓谷の奥地チョンギェー。ヤルルン王朝(古代チベット帝国)発祥の地だ。この石獅子はチベット王(ツェンポ)の一人を葬った古墳の上に立っている。石獅子はペアになっていて、墓を守る狛犬という風情だが、もう一頭の方は大分壊れている。

リチャードソンが言うように、この墓の主がレルパチェン王だとすれば、このライオンは1100年以上もここで風雨に耐えながら主人の墓を守ってきたことになる。

古代チベットの貴重な遺物だ。

この谷には、伝ソンツェン・ガムポ王陵をはじめとする古墳が十数基ある。
ここをチベットの王家の谷と呼んだのは、私が最初だと思う。今は旅行会社のパンフレットなどにもキャッチフレーズとして使われている。
背後の山の稜線に長城のようなものが見えるが、あの辺りにあったのが名高いチンワタクツェの城。かつてのソンツェン・ガムポの居城である。

チョンギェーはダライ・ラマ5世の出身地でもある。
5世の原風景の中に、いにしえの栄光を偲ばせる大古墳群があったことは重要だと思う。

ここを初めて訪れたのは1986年の東北大隊の時である。私たちが河原にテントを張ると、近郷近在の村人たちが見物に集まってきた。まだ外国人が本当に珍しかったのだ。

中にはかわいらしい女の子もいて、隊員たちは争ってこの子の写真を撮った。その兄も賢そうな少年で、さすがに5世の村だけのことはある、と妙な風に感心したのを覚えている。兄弟の母親は私たちに舌を出して挨拶した。伝統的なチベット人の最敬礼である。当時まだ田舎にはその習慣が残っていたという訳だ。

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