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留学生二題

2016年11月24日
雨に濡れそぼった銀杏の黄色い葉が、大学構内のアスファルトの上に散っている。
それを見てウセルさん、「これはゴミじゃないですね」
上手い言い方ができないだけで、何を言いたいかはよく分かった。こういう感性がチベット人にもあるということを改めて確認する思いだった。

チョウさんに「柘榴坂の仇討ち」を貸して上げたら、気に入った台詞を手帳に書いてきた。

「姿形は変わろうと、捨ててはならぬものがある。それも文明ではござらぬか」

これには感心した。実は私もこの台詞に注目していたからである。この台詞は、手懸かりを求めて新聞社を訪ねた主人公が、古いことにばかりこだわっていては文明国として立ちゆかない、と意見された時に発した言葉である。
明治5、6年に羽織袴、ちょんまげ、二本差しで歩いていれば、立派に旧時代の代表者である。観ている者は、それまでにこの人の境遇にすっかり同情していることもあって、この反論に溜飲を下げるのである。「文明とは、人間に義務の道のありかをさし示す行為の様式である」というマハートマ・ガンディーの言葉が想起される。

これを選んだところに、チョウさんの感覚のよさがあらわれている。

なお、復讐禁止令は彼にとって仇討ちを思い止まる理由にはならない。主君の仇を討つことは、彼が遵奉する文明においては大義そのものだからである。ではその結末はどうなるか。これは実際に見てもらうしかない。


ある大学教員の日常茶飯