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神島に渡る

2009年03月01日
田辺・南方熊楠顕彰館での講演会はなかなか手応えがあった。打ち上げもいつもにもまして盛大であった。
 しかし、それ以上にすばらしい体験が翌日は待っていた。
 
 神島(かしま)に渡ったのである。
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田辺湾に浮かぶ神島は、天然記念物に指定されている暖帯樹林の小島だ。「おやま」と「こやま」と呼ばれる、磯でつながれた大小二つの島山からなる。人はもちろん住んでいない。
 
 神社合祀反対運動を通じて神島の樹木を乱伐から守り、天然記念物に指定される道を開いたのは、熊楠であった。この島は、熊楠らが展開した自然保護運動のシンボル的存在であり、また彼の人生のハイライトとなった昭和天皇へのご進講の舞台でもある。正確に言えば、このご進講は御召艦長門の艦上で行われた。これに先だって、天皇は神島に上陸し、頂上の社まで登っているが、この時、熊楠は海岸で待っていたという。

 島の浜辺には、行幸記念に熊楠が詠んだ歌の碑が建っている。

「一枝もこころして吹け沖つ風 わが天皇(すめらぎ)のめでましし森ぞ」

 
 神島は正式な許可がなければ上陸できない。前日から行われている調査に加えてもらっての渡島である。
 しかも植物の専門家、D先生ご夫妻のガイド付きという贅沢なものであった。


 空は晴れ、海はあくまで青く、神島の森は鬱蒼と茂っている。原生林の中、道のない山を上り下りするうちに、昨夜のアルコールの残滓もどこかに消えていった。

 実に気持ちがいい。

 しかしD夫妻の説明によれば、この島の自然は、カワウの繁殖などによって荒廃が進んでおり、熊楠の当時とは、その姿を激変させているという。
 しろうと目には、豊かな森にしか見えないが、実はそのような状態にあることに、軽いショックを受けた。

 島には館で借りた長靴を履いていった。確かに神島は革靴では歩けない。しかし服は昨日の講演会のためのスーツである。
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はっきりしない写真だが、あまり見られた格好じゃないので、ちょうどいい。

 後でM居先生から、神島に正装で渡ったのは熊楠以来ではないか、とからかわれた。そうと知っていたら、ネクタイもしてゆくんだった。機会があれば、紋付き袴で上陸したいものだ。
 とにかく、この二日間はとても楽しく有意義だった。田辺のみなさん、ありがとうございました。
研究ノート
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